デコントラクティーには闇(暗さ)があります。
黒色を使っていることではっきりと暗い印象になりますが、デザインに注目しても闇を感じることができます。
その代表例が「裁ち切り」です。
生地の始末の方法のひとつですが、生地を切りっぱなしにすることでボロボロと糸がほつれてきます。
これは、「未完成」を意味するテクニックで、壊れそうな繊細さも感じます。
「タック」も分量にも闇を感じます。
身体に沿った細身できれいなシルエットは、人間をより人間らしく、性別をはっきりと表現します。
しかし、黒い生地でタックを多く取ったシルエットは、暗幕のような、何かを隠しているような心持にさせます。
他に闇を感じるポイントは「露出の少なさ」にもあります。
溌溂とした健康的なイメージとは逆で、肌の見える量が減ると禁欲的で厳かな印象になります。
デコントラクティーの物語に登場する「忘れられた魔女」のように、俗世間から離れてあまり人と関わらずに生きているイメージです。
神話や宗教では闇は光の反対を表します。
善と悪、生と死は、人間が生きているなかでとても重要なテーマです。
絵画や演劇といった闇(暗転)を扱う作品は多いですが、暗い中に存在する光が際立ち作品の世界に吸い込まれます。
文学では人間の闇をテーマにした『人間失格』『こころ』『金閣寺』などの名作に惹かれます。
晴れの日もあれば雨の日もあります。
暗い雨の日でも、そこには情緒があり、自然があり、世界があります。
憂鬱さも生きているからこそ得られる感覚です。
闇を含む服をつくっていることで、着た方の心の闇が少しでも表現できて、癒せればいいなと思います。
追伸:in the dark には「秘密に」という意味もあります。
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