Mサイズ　model 178cm

Lサイズ　model 178cm

Mサイズ　model 170cm

Lサイズ　model 170cm

detail

異素材の色合いの違い

比翼仕立て

斜めに切り替え

-story-

「双子のシャツ」

　大きな瞳の少年がいた。少年には双子の姉がいた。二人とも背格好はよく似ていたが、活発な姉と比べて少年は物静かだった。少年は屋内で自作のゲームを友達たちとするのが好きだった。ノートと鉛筆さえあれば、たくさんの冒険を創造できる仲間たちだった。少年は外で遊ぶ姉とは気が合わず、生活の場所は同じでも会話をすることはほとんどなかった。

　ある時、姉から島の外へ出ると聞かされ、少年は驚いた。少年にとって姉が唯一の家族であるし、姉はこの島でずっと過ごすと思っていた。少年は姉に捨てられたと感じたが、何も訊くことができずに黙っていた。

　魔女の噂を聞いたのは姉が島を出てからのことだった。噂によると姉は魔女の部屋によく出入りしていたようで、魔女が悪知恵を与えたのだと思った。魔女は島の外のことも詳しく知っており、外の世界の方が楽しいと吹聴したに違いない。好奇心旺盛な姉は素直に魔女の言うことを信じてしまったのだ。

　少年のなかで作られていく魔女のイメージが日に日に邪悪な塊に育っていった。島に満足していたはずの姉は悪魔に騙されてしまった。魔女はこれからもこの島を蝕んでいくだろう。なんとしてでも止めなければいけないと少年は使命感に燃えた。

　魔女は少年のことを知っていた。姉が旅立ってから歪んで堕ちていく少年を見ていた。そして、いつか狂気を抱えながら魔女の元に訪れることも予見していた。その時、伝えるべき真実は少年を慰めはしない。姉は誰から勧められたわけではなく自らの意志で島を出たのだが、姉以外の口から放たれた言葉は、少年にとっては偽りとなる。憎しみで我を忘れた人間が守る譲れない感情なのだ。

　魔女は姉に渡したツギハギの服を青年にも作ることとした。その服は小さな世界に留まれない姉の力強さが表れており、言葉で伝わらなかった姉の本当の気持ちが少年に響けばよかった。しかし、魔女にはわかっていた。少年にその思いが届くのは未来になってからだということを。